トムに初めて出会ったのは、数年前のアナハイム(USA.ロスアンゼルス)のショウの時でした。洗練されたファッション感覚と端正なマスクは、その実績も含めて周囲を圧倒する魅力があり、日本人向きのタレント性が充分あるので、来日してくれれば、当時、ちょっと沈滞気味であったネイリストたちは、ブレイクすると直感しました。
 それが水野義夫氏によって、即実現されました。以来、今回の伊勢丹(東京)のデモに、アメリカン・ドリーム・チームの一員として参加するまで、延15回も来日しており、日本のネイリスト達に素晴らしい夢と希望を与えつつあります。
 彼は1967年、ドイツ系とアイルランド系の両親のもと、3人兄弟の末っ子としてカリフォルニアに生まれ、若い頃は、デンティスト(歯科医)を目指していたが、ヘアー&メイクの美の世界に進み、コスメトロジスト(美容師)としての勉強中に「ネイルのコンテストに出場してみないか」と誘われ、その大会で幸運にも優勝してしまったのがきっかけとなり、以来ロングビーチ、ニューヨークなどのIBSショウを始め、メジャーのコンテストに優勝すること22回、入賞は数え切れないほどの実績を上げ、一躍全米を代表するマニキュアリストの地位を築き上げました。
 そんな彼に、いろいろと聞いてみました。「ネイル技術の魅力は、約一時間ほどの施術の中で、その人の理想としている、爪の長さや形を表現してあげることが出来る。瞬時にエレガンスにも、アクティブにも変身させられることです。
喜んでもらえると、技術者冥利に尽きます」
 「日本人のネイリストは、3年前に初来日したときは、正直言ってアメリカより5年は遅れていると、思いました。でも、その後セミナーで全国を廻らせて頂いた感想は、私の技術やアドバイスを『スポンジが水を吸い取る』様に、的確に吸収し、レベル・アップしている事実に感銘しています。もう本国と変わらないと実感しています」
 「日本のお客様は、とてもマナーがよく、美意識の高い方が多いと感じました。それにビックリしたのは、雑誌などを通じて、豊富な専門知識を持っているので単なるサロン・ワークを超えたセミナー・レベルの施術が要求されます『手(気)が抜けない』と感じています」とのこと。
「ミスター水野は、初優勝したときの審査員で、それ以来頭が上がりません。ダニー(Ez Flow社長)は、高校時代の2年先輩で、公私共々ベストフレンドです。彼の商品は、コンテスター向きで、仕上がりが他社製品より、数段美しいことが、アピール・ポイントです。今秋には、カラー・パウダーに続き、カラー・リキッドも発売されます」
 好きなモノは、黒を基調としたシンプルな衣装とピアス(現在身体中に9ヶ所つけている)。スケボーとパチンコ(新宿で7箱フィーバー)。そして、余生はなんとバリ島で過ごしたいとのこと。
 最後に「日本のネイリストがこんなに早くレベル・アップしてくれたことは大変うれしいです。今後共、デザイン・スカルプチュアを中心に全国でセミナーを行い。アメリカのアップ・ツー・デイト(最新)の技術を広めていきたい」円らな瞳を輝かして力強く語ってくれた。
 日本のネイル産業は元より、業界イメージアップへの、トムの功績は計り知れないものがある。チャンスを創った水野氏と共に、感謝を表します。
<1998年10月記 原文>